
こんにちは、行政書士の野口です。
今回は死後事務委任契約の利用において是非ご検討いただきたい事項について触れさせていただきます。
■死後事務委任契約をおススメする方
死後事務委任契約は、ご自身が亡くなった後に発生する様々な手続きについて、第三者に委任する契約になります。
参考:『亡くなった後の手続きに不安をお持ちですか?―死後事務委任契約①-』
その為、お一人で暮らされている身寄りのないご高齢の方だけが対象になるのではないかと考える方が多くいらっしゃいます。
しかしながら、最近の状況では、そのような立場の方ばかりではなく、様々な要因から、多くの方が対象になるだろうと考えられております。
例えば、近年において少子高齢化が進んでおりますが、あえて子供を持たないで、生涯お二人で暮らされているご夫婦も多くいらっしゃると思います。そのようなケースでは、一方が亡くなられた際に、高齢の配偶者のみで十分な対応が出来るでしょうか?
長年連れ添った方が亡くなった直後の悲しみの中、遺体の引取、葬儀社との折衝、菩提寺への対応などを、お一人で進めなければなりません。高齢の方ともなると非常に困難な状況になることが予想されます。
このように死後の対応について多くの懸念事項が考えられますが、特に下記の状況にある方は死後事務委任契約を検討されることをお勧めさせていただきます。
・お一人で暮らされている方
・2人ともご高齢のご夫婦
・家族・親族に負担をかけたくない方
・相続人以外に依頼したい方
・内縁関係の方と暮らされている方
■お一人で暮らされている方
死後事務委任契約を検討されるにあたって、当然に対象となる方といえますが、各々でお一人で暮らされている理由が様々あると思いますので、その方の状況によって検討される項目を絞る必要があると考えます。
配偶者との死別、又はそもそもご結婚を望まずに、お一人で暮らされてきた方の場合では、高齢でなくても身寄りのない高齢者と同じ境遇になる可能性があることを知っておくべきだと思います。
ご自身が亡くなった時を想定して、葬儀方法、埋納骨方法、居住先の片付けなどを事前に決めておかなければならないでしょう。そもそも、死亡届は誰が出して、その後に誰が火葬の対応をしてくれるのか、具体的にしておく必要があります。
又、実際にはお一人身という訳でなく、子供が海外に赴任されているという方や、兄弟姉妹が遠方で暮らされているという理由から、お一人で生活されているという方もいらっしゃるかもしれません。
ご親族が遠くで暮らしている為、逝去直後の対応が難しいという場合では、事前に死後事務委任契約を専門家と締結しておくことで、遠方に住んでいるご親族の方にも安心感を与えることが出来ると思います。
ちなみに、国や自治体については、あまり期待できないということはご承知おきください。
「なんだかんだ言っても、最後は税金を使って面倒を見てくれるだろう」と思われている方も多くいらっしゃいますが、国や自治体が、身寄りがない方が亡くなったのだからという理由で、住居先の遺品整理などに関与してくることは一切ありませんのでご注意ください。
■2人ともご高齢のご夫婦
先にも触れさせていただきましたが、2人とも高齢のご夫婦のケースでは、死後事務委任契約はとても有効に活用されると考えられております。
一方が亡くなられた際に、高齢の配偶者がお一人でどこまで対応出来るのか、極めて困難な状況になると思わざるを得ません。
人が亡くなった際は、病院などから遺体を引き取らなければなりません。あまり触れたくはありませんが、病院によっては、あからさまに遺体の引取りを急かしたり、人が亡くなった事実など無かったかのように事務的な対応をしてくる施設が存在することも事実です。
事前に相談していた葬儀社があれば、連絡することで遺体の引取りや、葬儀の段取りなどは代理で進めてもらえると思いますが、それ以外にも死亡届の届出や、菩提寺への連絡、葬儀後の対応など、多くの事務作業をこなさなければなりません。又、もし軽い認知症を発症している状況でしたら、更に対応は難しくなるでしょう。
高齢のご夫婦の場合、ご夫婦一緒に死後事務委任契約を検討されることもあるかと思います。お二人ご一緒での契約をお勧めする際に、「自分が元気な時に妻が亡くなった時には、葬儀や片付けで他人(専門家)に入って欲しくなく、自分自身で妻の死後対応を行いたいので、妻が亡くなった後に契約を考えたい」と仰られる方がいらっしゃいます。
お元気で、尚且つご自身で対応出来るのであれば、そのようなお考えになるのは当然かと思います。
上記のようなご希望がある場合では、契約内容で、【配偶者の希望で死後事務の対応は無効とする】としておくことも可能です。委任契約では柔軟な対応が出来ますので、契約される際にご相談いただければと存じます。
高齢のご夫婦は、【お一人様予備軍】とも言われています。いざという時の備えとして、様々な状況を想定されて、ご検討されることをお勧めいたします。
■家族・親族に負担をかけたくない方
子供さんやご親族がいらっしゃるけど、死後の対応を頼みたくないという方もいらっしゃいます。理由としては様々考えられますが、下記などが挙げられます。
・兄弟姉妹とは疎遠になっている
・子供が障がいを持っている
・姪甥について面識が無い、会った事がない
・兄弟姉妹がいるが、皆、高齢者である
このような方の場合では、ご親族がいらっしゃるとしても、お一人身の方と同じ問題が発生するとお考えいただいて、事前に対処しておく必要があると考えます。
亡くなった際には、必要な方に連絡してもらう項目を契約しておくことで、ご親族へ死亡のお知らせを対処することになります。又、遺言書の作成を合わせることで、亡くなった後の相続におけるご希望を叶えることも可能となります。
尚、このような方の場合ですが、対象となる関係者への死後連絡について、死後直後なのか、葬儀前・葬儀後なのか、埋葬後なのか、相続対応時なのか、等々を検討いただく必要がありますのでご承知おきください。
■相続人以外に依頼したい方
前項の【家族・親族に負担をかけたくない方】にも繋がる部分もありますが、このケースでは、例えば親しいご友人に最後の面倒をお願いしたいと考える方が対象となります。
配偶者は亡くなっていて、お互いが一人暮らしとなっている状況において、友人として長い付き合いがあり、何でも話せる親友などがあたると思います。
そのような関係から、どちらかが先に亡くなった場合には、残った一方が亡くなった方の死後対応を行うことを口頭で約束されている方もいらっしゃるようです。
ある耳にした話では、銀行口座のパスワードなどを友人に伝えておいて、葬儀費用などは、その口座から引き出して利用してもらうことまで口頭で約束している方がいらっしゃいました。
正直なところ、この方法は得策とは言えません。
まず、単なる友人というだけでは死亡届の届出人になることが出来ません。
死亡届を提出しないと火葬許可がおりません。そして、遺体の引取りや葬儀手配も断られる可能性があります。
・親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
・同居者(内縁関係を含む)
・家主、地主、家屋管理人、土地管理人
・後見人、保佐人、補助人、任意後見人
・公設所の長(病院長など)
又、故人の口座から勝手に現金を引き出すことは出来ません。横領と判断されてしまいますのでご注意いただく必要があります。
もし友人に死後の対応をお願いしたいということでしたら、友人を死後事務受任者に指名して、死後事務委任契約を締結されることをお勧めいたします。
■内縁関係の方と暮らされている方
内縁関係のパートナーと暮らされている方については、死後事務委任契約は必須とお考えていただきたく存じます。
まず、パートナーの方が危篤状態で病院に運ばれた場合ですが、施設によっては、親族以外は病室に入ることは許されません。最後に看取ることが出来ない可能性があります。
その後、同居人として死亡届の提出は出来ますが、これも施設によってになりますが、相続人でないという理由から、遺体の引取りが断られる可能性もあります。又、火葬、葬儀、埋葬も相続人の許可を得ることを条件とされてしまう懸念も考えられます。
又、相続人が葬儀を執り行うことになった場合では、内縁関係のパートナーの参列は断られる可能性もあるようです。特に最近では家族葬が選択されることも要因となります。
故人の遺志を尊重する上でも、内縁関係の方が様々な対応を行えることが出来るように、事前に、生前の委任契約と死後事務委任契約を締結しておくことは重要だと考えます。
今回は死後事務委任契約が有益と考えられる方について触れさせていただきましたが如何でしたでしょうか。
死後事務委任契約は、決して一人身の高齢者の為だけの契約形態ではありません。ご自身の状況を鑑みて、逝去後の様々な不安を解消出来る有効な手段になり得るか、一度ご検討いただければと存じます。
参考:高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)
死後事務委任契約につきましてご質問等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
👇お問合せはこちらからどうぞ!
お問合せフォーム
行政書士 野口広事務所のホームページ