
こんにちは、行政書士の野口です。
今回はお亡くなりになった後の様々な手続きを依頼できる死後事務委任契約について触れさせていただきます。
■死後事務委任契約の必要性
最高裁平成4年9月22日判決
主文:
原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由:
民法六五三条は、委任は委任者又は受任者の死亡によって終了すると規定しているが、右規定は、任意規定であって、契約において特段の合意があるときはその限りでないと解するのが相当である。すなわち、契約の内容、趣旨、目的等に照らして、当事者が、委任者の死亡後も委任契約を存続させる意思を有していたと認められるときは、当該契約は、委任者の死亡によって終了しないものと解するのが相当である。民法(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
毎年、内閣府からは、高齢社会白書という調査結果が報告されております。
「高齢社会白書」は、高齢化の現状や政府が講じた高齢社会対策の実施状況、今後の対策について明らかにしている年次報告書として様々な面で参考資料として引用されている資料です。
令和7年度版の本報告書によると、60歳以上の高齢者が事前準備として行っている事項としては、
① 所有物の整理:27.9%
② お墓の準備 :20.4%
③ 葬儀の準備 :20.4%
などが上位として報告されております。
個人的には、相続準備や、エンディングノートの作成などがトップに挙がってくるかと思っていましたので、少々驚かされました。
しかしながら、誰にも迷惑をかけることなく、ご自身の身の回りの整理を優先したい、という思いを持たれている方が沢山いらっしゃるという点を考慮すると納得のいく結果なのかもしれません。
昨今の終活ブームによる影響もあるかと思いますが、以前ではあまり触れられない内容であった、ご自身が亡くなった後の、いわゆる『お片付け 』についても積極的に語られる事が増えてきたように思います。
そして、この背景には、お一人で余生を過ごされる方や、ご親族が遠方で暮らされていて一人暮らしをされている方には、非常に深刻な、逝去後の問題として注目されていることも事実です。
又、実は一人暮らしの方のみならず、子供のいない、高齢のご夫婦につきましても同様な課題としても考えられております。
高齢のご夫婦の場合、どちらかが亡くなった時に、ご遺体の引取、葬儀準備、その他の手続きといった煩雑な対応がお一人で出来るでしょうか?
配偶者は相続人となりますので、様々な事項で対応することは事実上可能ではありますが、実際には非常に難しいのではないでしょうか。
そのようなことが問題視されることから、「死後事務委任契約」の必要性が急速に高まり、注目されている契約なのです。
■死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、ご自身が亡くなった後に発生する様々な手続きについて、第三者に委任する契約になります。
お一人で余生を過ごされる方や、近くに親族がいない方、そして高齢の配偶者のみが親族となる場合では、「誰が葬儀・供養や自宅の片づけをするのか?」といった問題が生じます。
そのような問題を解消する為に、事前に契約として整えておくことを死後事務契約といいます。
人が亡くなると多くの様々な手続きが発生します。子どもがいらっしゃらない方や親族が遠方で暮らされてる方の場合では、誰に依頼するのか事前に決めておかなければなりませんが、死後事務契約を利用することで安心感を得られることになります。
死後事務委任契約では、下記事項について事前に委任契約として依頼をしておくことが出来ます。
■葬儀関連
・ご遺体の引き取り/ 葬儀社葬儀手配 / 火葬許可の対応 / 関係者への連絡 / 納骨や埋葬など
■支払関連
・居住先への支払 / 入院費用の精算 / 葬儀費用の支払 / 光熱費等の公共料金の精算など
■行政関連
・死亡診断書の提出 / マイナンバーカードの返納 / 年金清算手続きなど
■遺品整理
・自宅整理・施設からの退去 / 家財道具の処分 / 退去の立会い / 修繕・清掃対応など
■その他
・ペットの引継先への対応 / クレジットカード解約 / WEB関連契約の解約など
■死後事務委任契約をお勧めする方
死後事務委任契約は、決してお一人で暮らされている方だけが必要となる契約ではありません。ご自身の環境に合わせてご検討いただく必要があると考えられております。
特に高齢のご夫婦の場合、逝去後の対応に不安をお持ちでしたら、難しいと思われる項目だけを選択して契約することも可能ですので、老後対策の一環としてご検討されることをお勧めいたします。
死後事務委任契約をお勧めする方
① お一人で暮らされている方
② 二人とも高齢のご夫婦
③ 家族・親族が遠方で暮らされている方
④ 相続人以外に依頼したい方
⑤ 内縁関係の方と暮らされている方
尚、実際に死後事務委任契約を締結する際は、清算関連の預託金の確保や、葬儀・埋葬などについて詳細を確認させていただくことになります。又、遺言書や後見制度の違いについても、契約をされる際にはご認識いただく必要があると考えております。
それらの事項につきましては、別ブログにて改めて解説させていただきます。
今回は死後事務委任契約の概要について触れさせていただきましたが如何でしたでしょうか。
事前に死後事務委任契約を締結しておくことで、逝去後の様々な不安を無くすことが出来る可能性がございます。死後事務委任契約につきましてご質問等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
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