任意後見制度の仕組みと利用場面を説明するイメージ


こんにちは、行政書士の野口です。

今回は任意後見人を複数選任することについてのメリット・デメリットをお伝えしたいと思います。


■任意後見人の複数選任


任意後見契約に関する法律
(趣旨)
第一条この法律は、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第二条この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。
一任意後見契約委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。
二本人任意後見契約の委任者をいう。
三任意後見受任者第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいう。
四任意後見人第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の受任者をいう。


先日のセミナー時におけるQ&Aの時間で、こんなご質問をいただきました。

『任意後見人って何人選んでも良いんですか?』

任意後見人は複数選択することは認められてますので、その旨をお伝えしました。

ご質問いただいた方にお話しを伺ったところ、お子さんが2人いるので、その内の一人だけを選ぶと兄弟同士で争いの火種になるかもしれない、ということからの確認だったようです。


任意後見契約とは、認知症などで判断能力が低下した際に、ご自身の財産管理や、身上保護に関する代理権を信用できる方に事前に依頼しておく、という非常に重要な意味を持つ契約になります。


任意後見人は士業などの専門家に依頼することも可能ですが、私の考えでは、可能であれば、お子さんなど信頼のおける親族の方に受任していただくことが契約者にとっても有意義な契約になるだろうと思っておりましたので、そのような心配事も発生するんだ…、と少し考えさせられた次第です。


任意後見人を複数人選任することは問題ありませんが、それにはメリット、デメリットの両方が存在することも考慮して検討される必要があると考えております。


複数の任意後見人を選任する場合は、「単独代理」と「共同代理」の2種類の方法から検討いただく必要があります。

それぞれの契約方法でメリット・デメリットがありますので、様々な面からご検討いただき、最終的な判断をしていただくことになります。




■単独代理


単独代理では複数の受任者とそれぞれで任意後見契約を行う方法を取ることになります。

そして、単独代理の中でも、各受任者が全ての代理行為を行使することが出来るケースと、それぞれの受任者毎に代理権を分担するケースから選択することになります。


単独代理における大きなメリットとしては、役割を分担することで、受任者の負担が軽減されることが挙げられると思います。


例えば、不動産の管理はA、預貯金の管理はB、身上保護に関する役割はCというようにしておくことで、各自の任意後見人としての業務負担が減り、各自で任された業務のみに集中することが出来ます。


また、一人で業務を行うケースと比較すると、お互いで業務の監視体制が構築されることになりますので、その点でも良い効果があると考えます。



では、デメリットとしてはどのようなものが考えられるでしょうか?

単独代理として役割を分担する際のデメリットとしては、分担されていない代理権は行使できないという点が挙げられます。

もし、財産管理を委任された受任者が欠けた場合、身上保護を委任された受任者はその財産管理における代理行為が出来ないという状況が発生してしまいます。


そのような状況になったら、どうなるのでしょう?

この場合、欠けた任意後見人の代理権をカバーできる体制がなければ、法定後見を選択せざるを得なくなる可能性があります。


せっかくご本人の判断で任意後見契約を行ったのに、法定後見を利用しなければならなくなるのは、ご本人の意思に反することに繋がっていきます。


では、各受任者が全ての代理行為を行えるようにしていた方が良いか?とも考えますが、その場合での注意点としては、複数の任意後見人で意見が割れていたとしても、一人の任意後見人が単独で代理業を進めてしまうことが可能になってしまいます。


もし兄弟で任意後見人を受任していたとしたら、それこそ、最初に心配していた事項のように争いの火種になりかねません。


又、実際に任意後見契約を発動する際ですが、各々で任意後見監督人を選任しなければならないことも考えられ、報酬など費用面での懸念が発生してきます。


参考:『任意後見を開始するには?監督人申立ての手続きと注意点』



■共同代理



共同代理というのは、一つの契約書で複数人を任意後見受任者として選定する方法です。
この場合では、選任された任意後見人全員で協議して、代理業務を進めることになります。


共同代理でのメリットとしては、任意後見人全員で協議の上、業務を進めることが出来ますので、お互いに安心感が生まれることになります。大きなミスなども事前に確認できることも利点として挙げられます。


共同代理を選択する場合は、「代理権の共同行使の特約目録」を作成して任意後見契約書に添付して契約を進める必要があります。


尚、代理権の共同行使の特約目録に記載されていない代理行為は、単独で行使することが可能となりますので、契約の際にはご本人の希望に合わせて契約内容を調整することが出来ます。



それではデメリットについては如何でしょうか?

全員で協議をして進めることは業務を行使する上で安心感がありますが、逆に意見が対立してしまう懸念も存在することになります。

一人でも反対意見がある場合では、業務を進めることが出来なくなります。例えば不動産の売却など、大きな判断を要する時では、後見人同士の意見が対立することも予想されます。


又、共同代理における最も大きなデメリットとして考えられるのが、任意後見人が一人でも欠けてしまうと、その契約自体が成立しなくなりますので、契約が終了ということになります。後見受任者を増やす場合では、契約不成立の危険性が高まることも考慮する必要があります。


■予備的任意後見人の選任について


「任意後見人が何かあった場合に備えて、予備的に次の任意後見人を選任しておくことは可能でしょうか?」

このようなご質問も比較的多くいただきますが、予備的に任意後見人を選任しておくことは残念ながら出来ません。後見登記を行うにあたって予備的対応を規定されていないので、法律上、難しいということになります。


どうしてもということであれば、内々に事前に決めておくという方法も考えれますが、家庭裁判所は、そのような特約には拘束されないというのが現状となります。





今回は複数の任意後見人の選定について触れさせていただきましたが如何でしたでしょうか。

任意後見人を複数指定しておくことは可能となりますが、以上のように多くのメリット・デメリットがありますので、実際に契約される際は様々な場面を想定されてご検討いただくことをお勧めいたします。

私個人の意見ではありますが、お一人の任意後見人を指定された方が、契約としての実務を考えますと良い面が多いように思います。

任意後見契約につきましてご質問等ございましたら、お気軽当事務所までご相談ください。

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行政書士 野口広事務所のホームページ

執筆者: 特定行政書士 野口 広(登録番号 第24131124号)

専門分野: 任意後見契約・家族信託・遺言・死後事務委任契約など