
こんにちは、行政書士の野口です。
今回は任意後見契約が発動する際の任意後見監督人の申立てについて触れさせていただきます。
■任意後見監督人とは
(任意後見監督人の職務等)
第七条任意後見監督人の職務は、次のとおりとする。
一任意後見人の事務を監督すること。
二任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
三急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
四任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。
2任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができる。
3家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができる。
任意後見制度についてお勧めする際ですが、時にはこのようなご質問をいただくことがございます。
『任意後見人って自分で選べるけど、本当に契約通りに動いてくれるのでしょうか?』
『そう考えると、家庭裁判所が選任する法定後見人の方が安心なんじゃないですか?』
任意後見制度を利用する際のメリットの一つとして、自分が信用出来る人を任意後見人に選任できるということが挙げられます。
しかし、誰を選任しても良いということであれば、専門家ではない、後見制度をよく理解されていない方が委任者の後見人となるケースも出てくる訳です。その為、このような不安を持たれることがあるようですね。
しかしながら、実は任意後見契約が発動する際には、家庭裁判所に「任意後見監督人の申立て」を行う必要があるのです。
家庭裁判所より選任された任意後見監督人は、任意後見人が契約通りに対応しているか監督をする役割を担い、財産管理が適正に行われているか、定期的に報告をするよう指示をすることになります。
任意後見人から受けた報告をまとめて、管轄の家庭裁判所に定期的に報告が行われることになります。
要するに家庭裁判所が任意後見監督人を監督することで、家庭裁判所が任意後見人を間接的に管理しているという図式になるのです。
■任意後見監督人の選任
(任意後見監督人の選任)
第四条任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一本人が未成年者であるとき。
二本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人である場合において、当該本人に係る後見、保佐又は補助を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるとき。
三任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。
イ民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百四十七条各号(第四号を除く。)に掲げる者
ロ本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
ハ不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
2前項の規定により任意後見監督人を選任する場合において、本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見開始、保佐開始又は補助開始の審判(以下「後見開始の審判等」と総称する。)を取り消さなければならない。
3第一項の規定により本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには、あらかじめ本人の同意がなければならない。ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
4任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族若しくは任意後見人の請求により、又は職権で、任意後見監督人を選任する。
5任意後見監督人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者の請求により、又は職権で、更に任意後見監督人を選任することができる。
任意後見契約では任意後見人は契約者が希望する人を選任することが出来ますが、任意後見監督人は候補を伝えられるものの、必ずしも家庭裁判所がその候補者を選ぶとは限りません。
多くの場合、弁護士や司法書士といった専門家が選任されるケースが多いようですね。
ただし専門家でなければならないという規定はありませんので候補がいらっしゃれば申立ての際には家庭裁判所に伝えるべきだと思います。
尚、任意後見監督人の欠格事由が設けられていますので、申立ての際はご注意下さい。
①任意後見受任者(任意後見人)
②任意後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹
③未成年者
④破産者で復権していない者
⑤裁判所から法定代理人などを解任された者
⑥本人に対して訴訟を起こした者やその配偶者及び直系血族
⑦行方不明者
尚、家庭裁判所に任意後見監督人を申し立てる際は、多くの書類が必要とされております。
下記は参考となりますが、各家庭裁判所で必要書類が異なるケースもありますので、申立て際は改めてご確認いただきますようご注意ください。
1)申立書及び申立事情説明書
2)財産目録及び財産内容を証明する資料
3)収支状況報告書及び収入支出を証明する資料
4)任意後見受任者事情説明書
5)本人の戸籍謄本及び住民票
6)後見登記事項証明書
7)登記されていないことの証明書
8)任意後見契約公正証書の写し
9)医師の診断書
10)親族関係図