
こんにちは、行政書士の野口です。
今回は家族信託の仕組みにつきまして触れさせていただきます。
■家族信託の役割者
信託法
(定義)
第二条この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
3この法律において「信託財産」とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。
4この法律において「委託者」とは、次条各号に掲げる方法により信託をする者をいう。
5この法律において「受託者」とは、信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。
6この法律において「受益者」とは、受益権を有する者をいう。
7この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。
前回のブログで、家族信託は各役割者を確定させて契約を締結させる旨をお伝えしましたが、家族信託での契約書の作成において、各役割と信託財産を明確させることが非常に重要な事項となります。
① 委託者:
家族信託契約で対象となる財産の所有者であり、信託法において財産管理を託す人を指します。受託者に対して信託事務の報告請求や解任権などを持つことが可能となります。
② 受託者:
委託者より託された財産について、管理・運用・処分を行う義務を任された人を指します。実際には委託者が元気な内は委託者の指示で対応することになりますが、判断能力が低下した段階で信託財産の管理を任されますので非常に重要な役割を担うことになります。
③ 受益者:
信託された財産の管理・運用・処分によって利益を得る人で、財産の権利を有する人になります。家族信託契約の多くのスタイルでは、委託者が受益者となるケースが多いようです。そのようなスタイルでの家族信託を自益信託と呼び、受益者が第三者となる場合を他益信託と呼びます。
④ 受益者代理人:
代理する受益者の権利に関する裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する人を指します。受益者が障がい者や認知症が進んでいる場合で意思決定が難しい状況において受益者の代理としての権限を有します。
⑤ 帰属権利者:
信託契約が終了、又は解除した時点で財産の受け取りを指定された人を呼びます。家族信託のメリットとして受益者連続型信託(2次相続、3次相続)が可能ですが、その際の信託終了時に帰属権利者を指定しておくことが出来ます。
⑥ 信託監督人:
受益者のために受託者を監督する権限を有する者を指します。受益者が障がい者や高齢で認知症が進んでいる状況において受託者が暴走しないように監督する立場をとります。尚、親族でも選任できますが、冷静な指摘が可能となる専門家などの第三者が選任されるケースが多いようです。
■信託財産について
(受託者の権限の範囲)
第二十六条受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。(受託者の注意義務)
第二十九条受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。
2受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。
(忠実義務)
第三十条受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。
家族信託で作成する契約書には、「誰が」、「どのような財産を」、「誰のために」、「どのような手法で」、「誰に」、「託するのか」、といった項目を盛り込まなければなりません。
家族信託が活用されるのは、相続で対象となる財産管理において、認知症などで判断能力が低下した状況になる前の備えという意味合いが強いと思います。
その為、勘違いをされる方もいらっしゃるのですが、家族信託契約は成年後見制度とは異なりますので、委託者の後見人になっている訳ではありません。
家族信託の受託者は、あくまでも指定された信託財産の管理権限しかありませんので、何を信託財産とするか、誰を受託者とするのか、は重要な検討事項となります。
では信託されていない財産はどうなるのでしょう?
もし財産を保有している本人の認知症が進んでしまったら、通常の民法の規定に則って、凍結されることになります。
又、死亡した後の相続手続においては、遺産分割の対象となりますので、遺言書がない場合では法定相続人による遺産分割協議が必要となります。
逆の考えをしますと、信託財産として指定しているものについては凍結されることはありませんので柔軟な財産管理や運用が可能となるのです。
もしご本人の認知症が進んでしまっていたとしても、家庭裁判所の判断を仰ぐこともなく、受託者が管理・運営できることになります。これは成年後見制度と比較すると大きなメリットとなります。
そして、ご自身が亡くなった後も、遺言書では不可能な、2次相続、3次相続と道筋を決めておくことも出来ますので、状況に応じた使い勝手のよい手段の一つと考えられます。
このようにご家族の環境や財産の内容によって、各々でオーダーメイドできることも家族信託の強みであると考えることができるのではないでしょうか。
今回は家族信託の仕組みなどについて触れさせていただきましたが如何でしたでしょうか。
家族信託では今まで不可能だった相続対策を行うことが出来ますので、各々の家族関係や財産状況などを鑑みて検討されることをお勧めいたします。次回以降では事例なども交えながら解説させていただきます。
家族信託における契約につきまして、詳細確認をご希望される場合は家族信託専門士の当事務所までお気軽にご相談いただければと存じます。
👇お問合せはこちらからどうぞ!
行政書士 野口広事務所のホームページ