さいたま市の行政書士、野口です。今回は相続手続きで出会ったレアケースを紹介します。
相続が発生した際、亡くなった方の不動産については、毎年届く固定資産税の納税通知書で確認することが一般的です。この確認方法は非常に有用で、手続きを進める上でも大切な第一歩となります。しかし、実務の中では「納税通知書だけでは思わぬ落とし穴が潜んでいる」ことを知る必要があります。
今回は、私が実際に経験した非常に珍しい事例を交えながら、相続手続きにおける不動産関連情報(登記、名寄帳、公図、固定資産評価)の重要性についてお話しさせていただきます。
■実際にあった、役所のデータ漏れ事例
先日、相続手続きのご依頼をいただいた際、ご家族が保管されていた登記済証(いわゆる権利証ですね)と固定資産税の納税通知書を提供いただき、両書類を突き合わせて確認する作業を行いました。
書類を精査していくと、少々不自然な点があることに気づきました。登記済証に記載されている土地が、なぜか届いている納税通知書には記載がなかったのです。
原因を確かめるため、すぐに管轄の役所へ向かい、不動産の詳細を突き止めるために「名寄帳」「固定資産評価証明書」「公図」などを取り寄せて改めて確認しました。しかし、やはり「登記」のデータと「役所」のデータが異なっていたのです。
改めて役所の担当部署に状況を伝え、詳しく調べていただいたところ、なんと、「登記記録は存在しているにもかかわらず、自治体のシステムに登録されないまま放置されていた」という極めて珍しい事実が発覚しました。
■システム移行時の処理漏れが原因?
担当の方が過去の記録を遡って確認されたところ、どうやら自治体のシステム変更に合わせたデータ移行や統合を行った際、業務データに関する移行の不手際があった為に登録が漏れてしまったのではないか、と推察されました。
最終的には役所の責任者の方から丁寧な経緯説明と謝罪があり、税務上の処理についても時効や行政側の過失等の観点から適切に整理され、無事に決着いたしました。
ご家族にとっては一安心という結果で落ち着いたのですが、もし書類の不備を見落としたまま手続きを進めていたら、その土地だけが相続手続きから漏れてしまい、将来的に売却や再度の相続の際に大きなトラブルになっていた可能性があったと考えると、流石に背筋が凍りました…
■登記と役所のデータで起きた手違い
「法務局に登記していれば、役所のデータも自動的に書き換わるのでは?」と思われるかもしれません。
通常は法務局から役所へ通知がいく仕組みになっていますが、今回のような大規模なシステム移行期や、かなり古い不動産の場合では、法務局のデータと役所のデータ(課税・名寄帳)が一致していないケースが稀に存在するそうです。
そのため、確実な相続手続きを行うためには、以下の4つのツールをそれぞれ個別に確認し、多角的な不動産調査を行うことが不可欠となります。
①登記事項証明書 (+登記済証・登記識別情報)
その不動産が「法律上、誰のものか」を証明する、最も信頼性の高い資料です。法務局が管理しているため、不動産調査の出発点となります。
② 名寄帳
自治体が、その人がその地域で持っている不動産を一覧表にしたものです。納税通知書では省略されがちな非課税地(私道など)も把握できます。
③ 公図
土地の「形状」や「境界」「位置関係」を表したもので、書類上の文字だけでは分からない隣接地との関係など、視覚的な課題を発見できます。
④ 固定資産評価証明書
その不動産にどれだけの価値(評価額)があるかを自治体が証明する書類です。納税通知書と同じ内容が記載されていますが、名義変更時の登録免許税を算出するために必要となります。
これらの書類は、対象となる不動産の所在地を管轄する「法務局」や「市区町村役場」で取得することができます。埼玉県にお住まいの方は、下記のまとめ一覧や公式ページの問い合わせ先を参考にしてみてください。
📌埼玉県の市町村役場一覧はこちら
📌さいたま市窓口の公式ページはこちら
📌埼玉県の法務局一覧はこちら
📌さいたま法務局公式ページはこちら
今回の事例は非常にレアなケースですが、「家族も把握していなかった不動産(私道や山林など)が実は存在していた」というケースは、実務上決して珍しくありません。
もし一部の不動産を見落としたまま遺産分割協議を終えてしまうと、後から名義変更されていない土地が見つかった場合には、もう一度相続人全員で遺産分割協議書を作り直さなければならないという、大きな手間と負担が発生してしまいます。
後々のトラブルを防ぎ、安心できる相続を行うためには、最初の一歩である「徹底した相続財産の多角的な確認」が何より重要と考えます。
相続手続きにおいて不安やお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。必要に応じて提携の司法書士や税理士といった専門家との連携を行い、確実な調査と手続きでサポートいたします。