こんにちは、行政書士の野口です。
今回は遺言書を遺されるべきと考えられる方につきまして解説したいと思います。
■遺言書が必要と考えられる方
セミナーで遺言書について解説していると、多くの方が遺言書に関心を持たれていることに気づかされます。
以前は、「遺言書は莫大な財産を持つ人が書くもの」「まだ元気なのに縁起でもない」といった意見が多く聞かれました。しかし最近では、遺言書を作成するハードルが下がってきているように感じます。
とはいえ、まだ漠然と「遺言書は書いた方が良いのかな」と考えている方もおられ、セミナー終了後には、「私にも遺言書は必要でしょうか?」「どんな人が遺言書を書いているのですか?」といったご質問をいただくことも少なくありません。
今回は、こうした状況を踏まえ、【遺言書が必要と考えられる方】についてお話ししたいと思います。
個人的な意見ではありますが、可能な限り多くの方に遺言書の必要性を検討していただきたいと考えています。特に、下記の7つの環境にある方には、遺言書の作成を強くおすすめします。順を追って解説してまいります。
① お子さまがいないご夫婦
② 相続財産に偏りがある場合(不動産と預貯金など)
③ 推定相続人が多い場合
④ 特定のお子さまが介護を担っていた場合
⑤ 認知症のご家族がいる場合
⑥ 前妻(前夫)との間にお子さまがいる場合
⑦ 音信不通のご家族がいる場合

■子供のいないケース
お子さんがいらっしゃらないご夫婦には、特に遺言書の作成を検討いただくことをおすすめします。
お子さんがいらっしゃらない場合、相続に関して誤解をされている方が少なくありません。子供がいない場合は、当然に配偶者が全ての財産を相続すると考えてしまう方が多いのです。
法定相続分では、配偶者は必ず相続人となります。子供がいない場合、次に相続権を持つのは被相続人の親、祖父母、さらにその次は兄弟姉妹です。
兄弟姉妹についても、代襲相続の可能性があります。既に兄弟姉妹が亡くなっていても、その子供(甥や姪)が相続人となる場合があります。代襲相続は兄弟姉妹に関しては一代限り認められています。
全く面識のない甥や姪が相続人になると、遺産分割協議に対応するのは心情的にも体力的にも負担が大きくなります。このような問題も、あらかじめ遺言書を作成することで事前に対処できます。
なお、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。そのため、遺言書で「配偶者に全ての財産を相続させる」と明記しておけば、こうした問題は避けることが可能です。
配偶者の生活を守るためにも、遺言書の作成を強くおすすめします。取り急ぎ、自筆証書遺言で「私の財産全てを妻(夫)○○に相続させる」と記載しておくことが有効です。
参考:『自筆証書遺言書保管制度の利用が増えてます~自筆証書遺言~』
■相続財産に偏りがあるケース(不動産と預貯金など)
ご相談をいただく中で、このようなケースに不安を感じている方も多くいらっしゃいます。例えば、自宅と預貯金を所有しており、相続人が子供2人の場合です。
預貯金などの現金は、相続人の人数に応じて分けることができます。しかし、自宅を分割することは容易ではありません。自宅の価値が預貯金と同程度であれば、長男に自宅、次男に預貯金といった分割も可能です。しかし、多くの場合、自宅の方が財産的に優位となることが多く、調整が必要になります。
自宅を売却して現金化(換価処分)する方法もありますが、長男が同居しており、そのまま自宅に住み続けたい場合は、売却が難しくなることもあります。その結果、相続人同士で遺産分割協議がまとまらない可能性も否定できません。
こうした事態を避けるために、ご自身の考える財産分配の方策を遺言書で残しておくことは非常に有効です。遺言書を用いれば、例えば「長男には自宅、次男には預貯金を相続させる」と具体的に指定できます。さらに、なぜそのように分配したのか、ご自身の想いを相続人に伝えることも可能です。
■推定相続人が多いケース
先程のケースでも触れましたが、相続が発生した場合には、配偶者は必ず相続人となります。そして、子供がいらっしゃる場合では、配偶者と子供との間で遺産分割ということになります。
しかしながら、もし子供がご自身よりも先に亡くなっていたとしたらどうなるでしょう?
その場合は孫へ相続の権利が移ることになります。先に説明したように代襲相続が発生することになります。
子が一人で孫も一人の場合は比較的シンプルですが、もし、複数の子がすでに亡くなられており、孫が多数いらっしゃる場合には、どのように考えればよいのでしょうか。
遺産分割協議は、原則として相続人全員の関与のもとで行う必要があります。
そのため、相続人が多数にのぼるケースでは、協議が難航することも少なくありません。
また、遺された配偶者が高齢である場合には、相続手続きをスムーズに進めることが難しくなるおそれもあります。
遺言書では、遺言内容を実現するための遺言執行者をあらかじめ指定しておくことができます。
このような状況が想定される場合には、遺言書を作成しておくことで、多くの問題を未然に防ぐことができるといえるでしょう。
参考:『遺産分割協議書は相続における合意の証になります』
■特定のお子さまが介護を担っていた場合
複数の子がいる中で、そのうちの一人が同居している場合、ご本人の介護を担っているケースも少なくありません。
このような状況では、他の子どもが同居している兄弟姉妹に介護を任せきりになることもあります。そして、介護を担った方からは、「一人で苦労して介護をしてきたのだから、他の相続人よりも多く財産を分けてほしい」といった希望が出ることもあるでしょう。
しかしながら、このような事情があったとしても、それだけで法定相続分の割合が増えるわけではありません。
また、これに類するケースとして、同居しているお嫁さんが義父母の介護を担っている場合も考えられます。しかしながら、お嫁さんは相続人ではないため、相続が発生しても原則として財産を取得することはできません(※特別寄与料の制度はありますが、一定の要件を満たす必要があります)
このような状況において、介護への感謝の気持ちから、特定の相続人に法定相続分より多く財産を渡したい、あるいは相続人ではないお嫁さんにも財産を渡したいといった希望がある場合には、遺言書によってその意思を実現することが可能です。
実際に介護を担ったという事情を踏まえ、ご本人が感謝の意を込めて遺言書を作成しておくことで、他の相続人の理解も得やすくなると考えられます。
■認知症のご家族がいる場合
このようなケースも、近年では増えてきているようです。
高齢のご夫婦で暮らしている中で、主に介護を担っていた方が先に亡くなるといった事例も見受けられます。
相続人の中に認知症の方がいる場合、遺産分割協議を行うには、家庭裁判所へ申立てを行い、成年後見人を選任してもらう必要があります。いったん成年後見人が選任されると、ご本人が亡くなるまでその関係は継続するのが原則です(※今後、制度改正が予定されています)
また、認知症の方が取得した相続財産は、その方固有の財産として管理されるため、他の相続人が自由に運用することはできません。
このように対応が難しい場面では、遺言書を活用することが有効な対策となります。たとえば、遺言によって財産の承継先をあらかじめ指定しておくことで、遺産分割協議自体を不要とすることが可能です。
その結果、成年後見人の選任を要する場面を避けることができ、また、承継した財産を活用して認知症の方の介護費用に充てるといった対応もしやすくなります。
また、認知症の方の生活を継続的に支える方法として、家族信託の活用も考えられます。たとえば、認知症の方を受益者とし、信頼できるご家族を受託者として財産の管理・運用を託すことで、相続によらずに、その方の生活費や介護費用に充てる仕組みを構築することが可能です。
このように、遺言書と家族信託を組み合わせることで、それぞれの役割を活かしながら、より実効性の高い対策を講じることができます。
参考:『家族信託はどう使う? 相続で役立つ仕組みと活かし方』
■前妻(前夫)との間にお子さまがいる場合
相続手続きを進めるにあたっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集する必要があります。
その過程で戸籍を確認したところ、前妻との間に子がいることが判明するケースもあります。この場合、その子も当然に相続人の一人となります。
ご遺族にとっては非常に複雑な心境になることと思われますが、遺産分割協議は相続人全員の関与のもとで行う必要があります。これまで面識のない異母兄弟と連絡を取り、相続について話し合いを進めることには、心理的な負担も大きいものがあります。
被相続人としては過去の事情をあえて明らかにしないままにされたのかもしれませんが、遺されるご家族の負担を考えると、あらかじめ遺言書を作成し、その中で対応方法を示しておくことが望ましいといえます。
遺言書において遺留分にも配慮した財産の分け方を定め、あわせて遺言執行者として専門家(行政書士等)を指定しておくことで、手続きの円滑化とご家族の負担軽減につながるでしょう。
■音信不通のご家族がいる場合
近年では、国内のグローバル化もあって、ご家族の中に「海外で活躍したい」と渡航し、そのまま音信不通になってしまう方がいるケースも見受けられます。
こうした相続人がいる場合でも、遺産分割協議は全員の関与が必要であるため、手続きを進めるのが難しくなります。
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を依頼する方法もありますが、あらかじめ遺言書で財産の分割を定めておくことで、家庭裁判所の関与なしに相続手続きを進めることが可能です。
また、音信不通の方が将来的に戻ってくることを考慮し、別途財産を残しておくこともできますし、遺留分に配慮して他の相続人への分割を指示しておくことも可能です。
いずれにせよ、遺言書を活用することで、遺産分割協議の手間を省き、円滑に相続手続きを進めることができます。
今回は、遺言書が必要と考えられる方についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
遺言書を作成しておくことで、相続時に生じやすいトラブルやご家族の負担を未然に防ぐことができます。特に、今回ご紹介したケースに該当する場合は、遺言書の有無によって手続きの負担やリスクを大きく軽減できます。
無用なトラブルを避け、ご自身の意思を明確に伝えるためにも、早めに遺言書の作成をご検討ください。
遺言書は、ご自身の想いを形にする大切なものです。
ご家族に安心して引き継いでもらうためにも、
内容をしっかり整理しておくことが重要です。
迷われている方は、お気軽にご相談ください。
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