『遺言書作成の際には、ぜひご留意下さい~配偶者居住権の活用~』



こんにちは、行政書士の野口です。

今回は比較的新しい制度である配偶者居住権について解説致します。


■配偶者居住権について



相続が発生した際には遺産分割について問題となることが往々にしてありますが、相続財産に今までご夫婦で住まれていた不動産が入る場合なども挙げられます。

例えば不動産が4,000万円、預貯金が4,000万円あった場合で配偶者と子供一人が相続人となる時は、配偶者が不動産、子供が預貯金を相続することで割合的には解決することになります。

しかし、もし不動産を相続した配偶者が高齢だとしたらどうでしょう?

住む場所を確保したのは良いですが、その後の生活費が確保できていないという問題が発生してしまうのです。


配偶者居住権が設定された理由として、「不動産を相続したが、今後の生活費まで確保できない」という問題を解決する為に「居住する権利」と「所有する権利」を分けて考えることができるようにしたものとなります。

先程の例でいくと、不動産の居住する権利を2,000万円、所有する権利を2,000万円の割合として分けた場合では、配偶者と子供に分けると預貯金も2,000万円づつ分けることになり、配偶者の生活費も確保できるということになります。

尚、上記では解りやすく居住権利と所有権利を等分しましたが、実際では居住期間によって居住権を算出することになります。





■配偶者居住権の設定


民法
第一節 配偶者居住権
(配偶者居住権)
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

第千二十九条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。


配偶者居住権を設定するには、配偶者が被相続人と一緒に暮らしていた居住先であることが要件となります。
その要件を前提として下記の手続きにより設定可能となります。

① 遺産分割協議によって取得
② 遺言書により遺贈された場合
③ 家庭裁判所の決定による

尚、存続期間を設定しなければ、配偶者が亡くなるまで配偶者居住権が存続することになります。


■配偶者短期居住権との違い


配偶者居住権とは別に「配偶者短期居住権」という制度があります。

これは配偶者居住権とは異なり、遺産相続協議などは関係なく、被相続人と一緒に暮らしていた配偶者には自動的に付与される権利とされていて、相続開始から6か月、又は自宅の相続が確定される日までのどちらか遅い方まで、配偶者は自宅に住み続けられるというものになります。

権利の内容において配偶者を守る設定となっております。

ただし登記が出来ない為、第三者に不動産が渡った場合に立ち退きを迫られたら、対抗できないことになりますのでご注意いただきます様お願い致します。






今回は配偶者居住権について解説しましたが如何でしたでしょうか。

従来の相続手続きでは残された配偶者が居住先と生活費の両方を安定して確保することが難しいケースもありましたが、配偶者居住権が設定され問題解決の一役を担うようになっております。

相続手続きでお悩みの事案がございましたら、相続専門の行政書士にご相談されることをお勧め致します。

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