『民泊のススメーその①  ~住宅宿泊事業法~』



こんにちは、行政書士の野口です。


今回は「民泊のススメーその①ー」として民泊を規制する住宅宿泊事業法について触れさせていただきます。

■民泊と住宅宿泊事業法


現在、再びインバウンド需要が復活して多くの外国人観光客が日本に訪れるようになってきてます。

コロナ禍前では、多くの外国人観光客の訪日により宿泊先の供給量について問題が生じていたのですが、その問題を解決すべく、新たなビジネスモデルとして「民泊」という手法が注目されました。

しかしながら、その手法には多くの問題が含んでいたのです。


その問題を解決する為に施行された法律が住宅宿泊事業法となります。



■住宅宿泊事業法の意義



住宅宿泊事業法
(目的)
第一条 この法律は、我が国における観光旅客の宿泊をめぐる状況に鑑み、住宅宿泊事業を営む者に係る届出制度並びに住宅宿泊管理業を営む者及び住宅宿泊仲介業を営む者に係る登録制度を設ける等の措置を講ずることにより、これらの事業を営む者の業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする。




住宅宿泊事業法は2018年6月に民泊ビジネスを規制する目的で施行された比較的新しい法律となります。



この法律が出来るまでは民泊を運営するためには、ホテル・旅館を運営するのと同じ「旅館業法」の許可を得る必要があったのですが、実は住宅宿泊事業法が生まれた経緯には旅館業法の許可取得の厳しさが関係していたことに繋がります。


民泊事業が広く知られるようになった時に新規ビジネスとして活用しようとする動きが活発化したのですが、実際に許可を取得しようとすると、非常に厳しい旅館業法の許可要件がネックとなり、民泊の無許可営業が多く発生してしまいました。


実際に無許可営業の摘発例が増加してしまったことも要因となり、旅館業法よりも緩い規制で民泊営業が可能となる「住宅宿泊事業法」が設定されたのです。



■民泊=住宅宿泊事業法?



それでは、民泊イコール住宅宿泊事業法と考えて良いのでしょうか?


民泊という大きな枠でとらえますと、3種類の営業方法に分類されることになります。

  ① 簡易宿泊所により民泊    : 旅館業法に則り許可を要する
  ② 住宅宿泊事業法による民泊  : 住宅宿泊事業法に則り申請・登録
  ③ 国家戦略特区による民泊   : 国家戦略特区の条例に則り認定


詳細は別ブログにて解説しますが、必ずしも「住宅宿泊事業法=民泊」という考えにはなりません。

旅館業法で取得した簡易宿泊所や国家戦略特区(特別に規制緩和された限られたエリア)での宿泊事業も民泊と捉えられています。

しかしながら、住宅宿泊事業法が制定された意義や、旅館業法のような厳しい許可要件が不要とされたことで民泊ビジネスを一気に広めた立役者ということから、民泊の代名詞のように思われる方も多いようです。



■家主居住型と家主不在型




住宅宿泊事業法
第二条 この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。



住宅宿泊事業法の施行により、許可を得ることなく申請のみで民泊営業を行うことが出来ることになりましたが、申請する際には「家主居住型」「家主不在型」を選択して申請する必要があります。

「家主居住型」とは、いわゆるホームステイと呼ばれる、ホストが住んでいる家に間借りする形態となります。

それに対して「家主不在型」とは家主が生活をしていない場所にゲストを宿泊させる様式をとりますので、必要に応じて鍵を渡して宿泊者自身で対応してもらう形態をとります。




住宅宿泊事業法では厳しい旅館業法で許可を受けたホテルや旅館と違い、「住宅」に宿泊させることが前提となりますので、ゲストを迎えることが出来る家主が生活している実態があるのか、家主が生活の拠点としていない場合では宿泊者の安全性が担保されているか、といったことから、家主不在型では、より厳しい申請条件が設けられております。

タイプ    管理方法   消防法
家主居住型事業者自身で管理通常の住宅の消防設備
家主不在型住宅宿泊管理業者に管理を委託旅館業と同等の消防設備




今回は民泊のススメその①として、住宅宿泊事業法の大枠に触れさせていただきましたが如何でしょうか。

民泊を説明するにあたっては旅館業法や国家戦略特区との比較、住宅宿泊管理業の内容、住宅宿泊管理業者への委託など多岐に渡る必要があります。


次回以降に別ブログとして触れさせていただきます。

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