こんにちは、行政書士の野口です。
今回は民泊のススメその⑤として民泊営業に非常に深い関わりを持つ旅館業法について触れさせていただきます。
■旅館業法とは
旅館業法
第一条 この法律は、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
民泊の話をする際には切っても切れない条例となるのが「旅館業法」となります。
住宅宿泊事業法が施行されて民泊許可が解禁されたかのような報道が多く出されましたので多くの方が勘違いをされたようですが、実際には住宅宿泊事業法が施行される前にも旅館業法をもって民泊の営業許可が出されていたという事実があります。
そもそも旅館業法は「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう」と定義されておりますので民泊についても当てはまる条文になるのです。
しかしながら、広さ要件やフロントの設置、浴室要件や照明、トイレ要件などなど、様々な厳しい規定が要求されていたため、「だったら無許可で民泊してしまえ!」という乱暴な無許可営業の輩が増えてしまったという経緯がありました。
そこから「住居」を宿泊先として利用できることを目的とした住宅宿泊事業法が成立していくことになり、民泊営業のハードルを下げたという流れになるのです。
■旅館業の種類
旅館業では3つの種類に分けられます。
原則的には「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう」の定義に則った営業スタイルとなりますが、求められる要件が異なることになります。
② 簡易宿所営業
③ 下宿営業
1) ホテル・旅館営業
旅館業法施行令
第一条 旅館業法(以下「法」という。)第三条第二項の規定による旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 一客室の床面積は、七平方メートル(寝台を置く客室にあつては、九平方メートル)以上であること。
二 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その設置場所が法第三条第三項各号に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合には、当該施設から客室又は客の接待をして客に遊興若しくは飲食をさせるホール若しくは客に射幸心をそそるおそれがある遊技をさせるホールその他の設備の内部を見通すことを遮ることができる設備を有すること。
八 その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。
以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
旅館業法の種類で最も厳しい要件を求められる形態区分となり、いわゆる「ホテル・旅館」を指します。
2016年に旅館業法施行令が改正されていますが、それでも、床面積、フロント、換気、照明に至るまで、細かい内容が規定されて、尚且つ、各都道府県の条例別でも上乗せで規定されております。
2) 簡易宿所営業
旅館業法施行令
2 法第三条第二項の規定による簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
二 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
この簡易宿所営業が、旅館業法で「民泊」と称される営業方法となります。
しかしながら、用途地域制限や消防法などは旅館業法の規定に則って許可を得ることになりますので注意が必要です。
ホテル・宿泊営業との違いは、床面積について緩やかな規定に変更されていることと、階層式寝台を利用する場合での規定が設けられていることが挙げられます。
3) 下宿営業
旅館業法
第二条
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
最後に下宿営業ですが、これは、いわゆる学生さんが下宿する場所ではありません。
必要に応じて、一か月以上、宿泊費を取って宿泊させることを意味しまして、長期にわたる工事などで、対応される方に宿泊先を貸し出すケースなどがあたります。
今回は旅館業法について触れさせていただきましたいかがでしたでしょうか。
住宅宿泊事業法に則って申請することで民泊ビジネスを始められることになりますが、年間180日しか貸し出すことが出来ないという大きなデメリットが存在します。
継続的にビジネスとして民泊を行うのであれば、旅館業法に則った簡易宿所営業の許可取得について一度ご検討されることをお勧め致します。
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